船泊まりまで

小学館文庫 [文庫]

¥580

小学館
あらすじ

システムエンジニアの俊一とその妻冴子は、世間と一定の距離を保ちながら容易に和解しようとしない。しかし、それでも静かな生活を送っていた。俊一は、アパートの隣に住む女・冴子と関係を持ち、世帯を構えた。そんなふたりに、彼女の妹夫婦から代理母になってくれないか、との相談が持ち込まれる。その選択を受け入れた冴子だったが、やがて、お腹が大きくなるうちに彼女のなかで変化が起こり始めた。

先生からのコメント

2006年、小学館。小学館文庫。 現代という文脈のなかで、漱石の『門』のような作品を書きたい、という思いを十年くらい温めてきた。ここでの宗助とお米は、不妊治療や人工授精といった医療テクノロジーに翻弄される。ぼくは大学院のころ、古井由吉の文章を手本に小説を書きはじめた。長いあいだ意識的に封印してきた文体を、ここではあえて使ってみた。ぼくが書こうとする世界にふさわしいと思ったからだ。先ごろ、『サエコの年』というタイトルでスペイン語版が出たらしい。