あらすじ
兄からの電話が、すべての始まりだった。「あのゼラニウムの絵は、どこへ行ってしまったのだろう」やがて、男は知ることになる。五歳の少女が、長い時間を堰きとめられて、ひっそりと生きつづけてきたことを―。答えは、少女が知っている。四十余年の歳月。記憶の死角が仕掛けた「謎」。そこに執着する兄弟。ミステリー的興趣を盛り込んだ著者の新境地。
先生からのコメント
2008年、小学館。 はじめて家族の話を正面から書いた。夫婦、親子、兄弟……どうしてつながりあえなくなっているのか。損なわれていく大切なものへの悲哀がテーマである。主人公を歯科医にしたのと、主人公の兄をアルコール依存症にしたのが新機軸。ロサンゼルスあたりのドライな雰囲気(行ったことはないけれど)を出したかった。自家用車を多用しているのも、そのため。