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中洲ぜんざい / 福岡ウォーカー寄稿 これは美味なり

小学生のころ、父がカキ氷機を買ってきた。現在は電動のものも出ているようだが、当時のものは手動のハンドルをぐるぐるまわして氷を掻くタイプ。手回しのコーヒー・ミルみたいな感じ。
円盤状の氷を作るための、専用のアイストレーが付いていた。これでいつでも好きなときに、カキ氷が食べられるってわけだ。

ぼくと妹は大喜びで、さっそく作ってみることにした。
冷蔵庫のなかで氷ができるまでの時間が待ち遠しかったこと。ようやく固まった氷をセットして、交替でハンドルをまわす。氷を掻くシャリシャリいう音がなんとも涼しげだ。
ガラスの器に、見る見るフレーク状の氷の山ができていく。
おお、お店で食べるカキ氷と同じだ。
感動した。毒々しい色のイチゴのシロップをかけて、それから数日、ぼくたちは心行くまでカキ氷を食べたのだった。

カキ氷とは、その名の通り氷を掻いただけのもの。氷の原料は、言うまでもなく水である。材料費は限りなくタダに近い。ところがお店で食べると、五百円くらいは取られてしまう。馬鹿ばかしい、と子どもをもつ親の多くは考える。そして魔が差すようにして、家庭用のカキ氷機を買ってしまうのである。
しかしカキ氷を常食としている人が、いったいどれくらいいるだろう。あなたはひと夏に、何度くらいカキ氷を食べますか?
子どもとて同じ。すぐに飽きてしまう。でも「馬鹿ばかしい」と考える親は跡を絶たないので、カキ氷機は不滅だ。めでたし、めでたし。

中洲ぜんざいというのは、お店の名前である。櫛田神社の裏手にある、知る人ぞ知る小さなお店。「ぜんざい」というくらいだから、メインはぜんざいとおしるこなのだが、いくら甘党とはいえ、夏の盛りにぜんざいはちょっと辛い。
それで夏の限定メニューとして、カキ氷が登場したのではないかと推察される。
ここのカキ氷のファンは、ぼくのまわりにも意外と多い。味はもちろんだが、表によしずを渡した店のたたずまい、昔ながらの雰囲気に惹かれる部分も大きいと見た。おすすめは「宇治ぜんざい」かな。「金時」と言わず、あえて「ぜんざい」と言い張るところが、いかにもである。
カキ氷のなかに、小豆と白玉が入っている。暑い昼下がり、川端通り方面へお越しの折りに、食されてみてはいかが。
日曜、祝日はお休みなので、ご注意を。