> 2011年10月の特集

備えあれば…… / 愛媛新聞PR誌「アクリート」寄稿 日々是ほぼ好日

ぼくはがん保険にも入らず、がん検診も受けず、もし重い病気になったときは、あまり過激な治療はお断りして、のんびり身体をいたわり、自分なりに養生しつつ、だめなら静かに死んでいきたいものだと思っている。
実際は、どうなるかわからないけれど。

一方で、保険に入り、きちんと検診を受けておられる方も多いだろう。それで病気にたいする心配や怖れが小さくなるかというと、そういうわけでもないような気がする。
なまじ備えがあることで、かえって憂いが大きくなることもある。たとえばお金や財産。
あれば便利だし、それなりに安心ではあるだろうが、気苦労も増える。
百億円の蓄えのある人が、百万円の人よりも憂いが小さい、ということはなさそうだ。むしろ持たないことの気楽さが、人を生きやすくするかもしれない。セコムもしなくていいしね。 備えがあることで、確実に憂いが大きくなるもの。その最たるものが軍備である。

たとえば軍事面の備えにかけては、世界のチャンピオンであるはずのアメリカは、軍事的にいちばん憂いの大きな国のように見える。
軍備においては、これだけ持てば安心というラインがない。いくら核やミサイルで武装しても、けっして国の安心は得られない。どこかで頭を切り替える必要があるだろう。
このたびの大震災、被害の大きさからすると、日本で六十何年ぶりに戦争が起こったようなものだ。
戦争をするということは、こうした光景が日常になることなのだな、とあらためて思う。
今回の相手は太平洋プレート、戦後処理としては復興のことだけを考えればよい。
この機に、平和のあり方をもう一度真剣に問い直し、せめて日本という国のたたずまいは、落ち着いたものにしていきたい。